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さて、ここで突然だが、OPアンプの動作の基礎研究(^^;
やはり、電流正帰還アンプを理解するためにはOPアンプに帰還を掛けて使う場合のOPアンプの挙動を理解しなければならないようだ。
なにせ金田式DCアンプも含めて世のオーディオ用アンプはOPアンプICを用いるか否かにかかわらずOPアンプだし、この機会だから・・・、などと言えば、「何を今頃」と思われる方もおられれば、パワーアンプまでデジタルになろうとしているのに「今更何を」と思われる方もおられるのでしょうが、まあ、下手な基礎研究と適当に読み飛ばして頂いて、過ちを発見された場合はどうぞご指摘下さい。(^^;
OPアンプと言えば“バーチャルショート”、あるいは“イマジナリーショート”と良く言われる。
要するにp1とp2が仮想的に短絡しているそうだ。
・・・な〜んて(^^;、日本語に翻訳して分かったつもりになっても実は何も分からない。
ショートと言われると導線で繋がれているのと同じ状態か・・・と思ってしまうが、そうではない。のだが、まるで繋がっているように考えても良い、という点がバーチャルショートの由来らしいのだが、その意味するところは、p1とp2の端子電圧Vp1とVp2が等しい、即ち、Vp1=Vp2と考えて支障がない。ということらしい。
素人だから、このようにVp1=Vp2だよと解説されると、今度は単純にVp1=Vp2だという目でOPアンプの動作を見てしまうのだが、実際はVp1≠Vp2であるという冷静かつ沈着な目がないとOPアンプの動作は理解できないようでもある。大体、OPアンプを差動動作で使用する場合、p1とp2の入力電位差が増幅されて出力されるのだから、Vp1=Vp2の筈がないのだ。
じゃあ、どう考えれば良いの?となるのだが、要するにVp1=Vp2と考えて支障がないのだが、Vp1≠Vp2である。というのが、バーチャルショートの意味なのだろう。これではますます分からない。う〜ん、そうですね。まあ、マクロに見ればVp1=Vp2だが、ミクロに正確に見ればVp1≠Vp2ということだろうか。実際問題、p1からp2に電流がスルーして流れることはない訳で、要するに、マクロに見れば良いときにはVp1=Vp2を用い、ミクロに正確に見なければならないときにはVp1≠Vp2を用いれば良いんだよ、と言うか、用いなければならないんだよ、ということなのだろう。多分(^^;
また、OPアンプは理念的には入力インピーダンスは∞、増幅度も∞、出力インピーダンスは0Ωであること、実はそうだからこそバーチャルショートが成り立つのだということ、さらには、非反転入力と反転入力の意味も理解しておく必要があるようだ。
即ち、出力インピーダンスが0Ωということは、出力端子は交流的にはアースと考えて良いと言うこと。素人なので、アースということは電位は0Vか、な〜んて思ってしまうのだが、勿論直流的にはそうではなくて、その電位は交流的には非反転入力と同位相、反転入力とは180°反転した位相であって、直流的には、非反転入力が+電位なら出力も+電位となり、反転入力が+電位なら出力は−電位になる、というロジックがあるのだ、という理解も必要になる。(なお、図で出力のp3端子に極性表示がないが、暗黙の了解で+ということらしく、省略されている。)
へ〜、じゃあ、直流で非反転入力に+電位を与え、反転入力にも+電位を与えたら、出力に現れる電位は+なんでしょうか?、−なんでしょうか?ロジックの矛盾ではありませんか? と自ら問うわけだが・・・
う〜ん、その場合は、例の差動動作という考え方を導入して、非反転入力の+電位>反転入力の+電位の場合 → 出力は+電位で、非反転入力の+電位<反転入力の+電位の場合 → 出力は−電位となり、非反転入力の+電位=反転入力の+電位の場合は → 勿論出力に変化はなく出力は0V となるのですかね。
勿論同相抑圧比なんて言葉があるくらいだから、こういうのは理念的動作で、これは理想のOPアンプの場合だ。
まあ、それはともかく、ここでも、バーチャルショートVp1=Vp2では差動動作自体理解できないことが分かる訳で、果たしてこの程度の知識で帰還を掛けたOPアンプの動作が理解できるのかどうか心許ないが、電流正帰還を少しでも理解するために、ちょっと下手な解析まがいをやってみる・・・の巻(^^;
先ずは、1 非反転増幅。OPアンプの増幅動作の典型例として良く見かけるものだ。金田式DCアンプも実はこれだ。
非反転増幅という意味は、入力Viと出力Voが同相であるということであり、直流的には入力が+なら出力も当然+、入力が−なら出力も−ということだ。
また、このOPアンプは理念型のOPアンプなので、入力インピーダンスとオープンゲインは無限大、出力インピーダンスは0Ωの理想OPアンプである。
さて、
先ずこの動作でのアンプの増幅率Aを求めると、
バーチャルショートだから
Vp1=Vp2
ここで Vp1=Vi、Vp2=a/(a+b)*Vo
よって Vi=a/(a+b)*Vo
よって Vo=(a+b)/a*Vi
∴A=(a+b)/a
なので、非反転増幅のクローズドゲインは、帰還ループの抵抗aとbにより、(a+b)/a と定まる訳だ。
また、この場合の入力インピーダンスZiと出力インピーダンスZoは、理想OPアンプの定義から、
Zi=∞
Zo=0
であることは明らかだ。
次は、2 反転増幅。これの方がOPアンプの増幅動作としてはポピュラーらしいが、金田式DCアンプでは差動出力アンプで使われることがあるだけ。ちと違うかな。
反転増幅の意味は、この動作では、入力Viに対して出力Voの位相が180°反転するということであり、直流的には入力が+なら出力は−、入力が−なら出力は+ということだ。
増幅率Aは、
ここでもバーチャルチャルショートだから Vp1=Vp2
ここで Vp1=b/(a+b)*Vi+a/(a+b)*Vo、Vp2=0
よって b/(a+b)*Vi=−a/(a+b)*Vo
よって Vo=−b/a*Vi
∴A=−b/a
なので、反転増幅のクローズドゲインは、−b/aに定まることになるが、−だから出力の位相は入力と180°回転したすなわち反転したものになる訳で、直流入力であれば入力が+なら出力は−、入力が−ならば出力は+となる訳だ。
この場合の入力インピーダンスZiはどうか。バーチャルショートでVp1=Vp2だし、Vp2はアースに接続されているんだから、Vp1もアースと考えて、よってZi=a・・・。
・・・まあ、Vp1=Vp2が導線で繋がっている意味であればそうなるが・・・実は自分もさっきまではZi=aじゃないか、と漠然と思っていたのではあるが・・・(^^;;
この場合はaに流れる電流をIiとして、Zi=Vi/Iiとして求める。
大体、Vp1点の入力インピーダンスは∞だから、Iiの電流はVp1点からアースにスルーするはずがなくて、実際はVp1点からbを通って出力インピーダンスが0Ωの出力端子に抜けると考えるしかないはず。
なので
Ii=(Vi−Vp1)/a=(Vi−b/(a+b)*Vi−a/(a+b)*Vo)/a=(a/(a+b)*Vi−a/(a+b)*Vo)/a=Vi/(a+b)−Vo/(a+b)
ここで Vo=−b/a*Viを代入して
Ii=Vi/(a+b)+b/(a*(a+b))*Vi=(a+b)/(a*(a+b))*Vi=Vi/a
∴Zi=Vi/Ii=Vi/(Vi/a)=a
おお!結局バーチャルショートで考えたaじゃないか。
が、それは怪我の功名というもの、か、はたまた、バーチャルショートの功徳なのか・・・(^^;
あとは出力インピーダンスZoだが、これはOPアンプの定義から
Zo=0
でいいだろう。
ならば、3 こんなつなぎ方でも動作するのではないか。
この場合でも、バーチャルショートだから Vp1=Vp2
ここで Vp1=Vi、Vp2=a/(a+b)*Vo
よって Vi=a/(a+b)*Vo
∴Vo=(a+b)/a*Vi
∴A=(a+b)/a
なのだが、ロジックで考えると、a,bは現実の世界の抵抗だからa,b>0。従って、Viが+なら(a+b)/a*Viは必ず+。ところが反転動作のロジックからすればViが+ならばVoは−でなければならない。
よって、この動作は、“−=+”というロジックが成り立つ世界でのみ動作する回路だということになる訳で、結局この世では使わない方が賢明な動作のさせ方ということになる。
無理に接続してみたらどうなるか・・・OPアンプもどうしたらよいか途方に暮れて、発狂したり逝ってしまったりするのだろう・・・
続いて 4
これも3と同じく、彼岸のOPアンプ動作。
A=−b/a がロジックに合わない。
なので、彼岸動作のOPアンプの考察はこれで終わりにして遂にメインテーマの電流正帰還増幅に進みたい。
が、なんと、それは、上の普通の非反転増幅又は反転増幅のOPアンプに、なんとこれらの彼岸のOPアンプの動作の形を付加するものなのですなぁ
果たしてバーチャルショートで解けるものか?
まず、これ。
非反転増幅のOPアンプが基本となった電流正帰還増幅タイプ。
金田式DCアンプにΛ式MFBアダプタを付加した場合、こういう回路になる。
ヤマハのASTのアンプ回路もこうなのかどうかは知らない。
が、これは上の例に比較すると複雑だ。かなり込み入っている。この動作、解析できるだろうか。
まず、この動作でのアンプの増幅率Aから。
ここでもバーチャルショートだから Vp1=Vp2
Vp2=d/(c+d)*Vo は良いのだが、問題はVp1。
Vp1はオームの法則では無理でキルヒホッフの法則を使わないと解けないよう・・・、なのでにわか勉強し(^^;;
aに流れる入力電流をIi、eに流れる出力電流をIoとすると、
(a+b)・Ii+f・(Ii+Io)=Vi
e・Io+f・(Ii+Io)=Vo
これをIiについて解くと、
Ii=((e+f)Vi−fVo)/((e+f)(a+b+f−f^2)) となる。
Iiが分かれば、Vp1=Vi−a*Ii だから
Vp1=Vi−((e+f)Vi−fVo)/((e+f)(a+b+f−f^2))*a
=(b+f−f^2)/(a+b+f−f^2)*Vi+af/((e+f)(a+b+f−f^2))*Vo
となる。
ここで
Vp2=d/(c+d)*Vo、バーチャルショートでVp1=Vp2 だから
d/(c+d)*Vo=(b+f−f^2)/(a+b+f−f^2)*Vi+af/((e+f)(a+b+f−f^2))*Vo
よって
d/(c+d)*Vo−af/((e+f)(a+b+f−f^2))*Vo=(b+f−f^2)/(a+b+f−f^2)*Vi
よって
Vo=(c+d)(e+f)(b+f−f^2)/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi
∴A=(c+d)(e+f)(b+f−f^2)/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))
としたいところだが、ここで、Vi、Vp1、Vp2、Voは全て対アース電圧であることに留意する必要がある。何故なら、この型式で出力を取り出すのは、Voとアース間ではなく、抵抗e(=スピーカー)の両端だ。
だからこの場合の正しい出力Vo’は
Vo’=(c+d)(e+f)(b+f−f^2)/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi*e/(e+f)
=e(c+d)(b+f−f^2)/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi
∴A=e(c+d)(b+f−f^2)/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))
と、何とか求まったようだ。(^^)
じゃあ、入力インピーダンスZiはどうか。
Zi=Vi/Ii に違いあるまい。で、Iiはすでに求めてある。
Ii=((e+f)Vi−fVo)/((e+f)(a+b+f−f^2)
ここで、Vo=(c+d)(e+f)(b+f−f^2)/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi を代入して、
Ii=(d(e+f)−f(c+d))/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi
ここでZi=Vi/Iiだから
Zi=(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))/(d(e+f)−f(c+d))
と、入力インピーダンスも求まった。
最後に出力インピーダンスだが、これはいくら考えてもバーチャルショートの考え方だけでは求められないよう・・・
どうすれば求められるのか・・・・・・
と、ややしばらく途方に暮れて、断念しかかった。
が、A=e(c+d)(b+f−f^2)/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))を眺めているうちに、ふと、ON−OFFで求めてはどうか、と考えついた。(^^)
と言って、開放時と負荷時のVoの差で求めるのではなくて、負荷R1とR2(R1<R2とする)を用意して、R1負荷時の出力電圧とR2負荷時の出力電圧から出力インピーダンスを求める方法で、R1負荷時の出力電圧をVo1、R2負荷時の出力電圧をVo2、出力インピーダンスをZoとすれば、OPアンプ本来の起電力(Vとする)がZoとR1又はR2で分圧されてVo1又はVo2の出力電圧となると考えれば良い筈なので、従って、Vo1=R1/(Zo+R1)*V、Vo2=R2/(Zo+R2)*V だから
(R1+Zo)*Vo1/R1=(R2+Zo)*Vo2/R2
これをZoについて解くと、
Zo=R1*R2*(Vo2−Vo1)/(R2*Vo1−R1*Vo2) で出力インピーダンスが求められる。
だから、R2=2R1を満たしている時(8Ωと16Ωとか4Ωに8Ωとか)には
Zo=2*R1*(Vo2−Vo1)/(2*Vo1−Vo2) で出力インピーダンスが求められることになる。
という手法をここで適用しようという考えだ。
が、問題は、こんな机上のアンプの出力インピーダンスを計算しようというのに、外から抵抗をあててVoを測る訳にもいくまいに、その考え方を適用できるのか、なのだが、
この電流出力アンプ、負荷がeそのもので、Vo’は上のとおりeの関数でもある、というところが肝だ。(^^)
であれば、このアンプの出力インピーダンスは机上のON−OFF法で求められる筈だ。
と、早速やってみれば・・・、
2e時のVo’=2e(c+d)(b+f−f^2)/(d(2e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi
e時のVo’=e(c+d)(b+f−f^2)/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi
よって、
Zo=(2e(2e(c+d)(b+f−f^2)/(d(2e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi−e(c+d)(b+f−f^2)/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi))/(2e(c+d)(b+f−f^2)/(d(e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi)−2e(c+d)(b+f−f^2)/(d(2e+f)(a+b+f−f^2)−af(c+d))*Vi)
これを整理すると
Zo=f−af(c+d)/d(a+b+f−f^2)
なんと。求まった。
実に単純な式になるものだ。
ふ〜む・・・、eが消えてしまう。
ということは、この回路の出力インピーダンスは、e(=即ちスピーカーのインピーダンス)に関係しない訳だ。
が、eは現実のスピーカーである訳で、こちらの都合で取り替えたりしたい訳だから、出力インピーダンスが負荷のスピーカーのインピーダンス(=e)の影響を受けないなら、その方が良いに決まっている。(^^)
さて、以上は解析のアルゴリズムが正しい場合にだけ正しいものだ。アルゴリズムに誤りがあった場合はなんら意味のない話になるが・・・、ま、早速、a,b,c,d,e,fに実際の数値を入れてコンピュータに計算させてみよう。(^^;
a |
10k |
10k |
10k |
10k |
10k |
10k |
10k |
10k |
10k |
10k |
10k |
10k |
10k |
b |
50k |
40k |
30k |
20k |
10k |
8k |
6k |
4k |
2k |
1k |
500 |
100 |
0 |
c |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
d |
680 |
680 |
680 |
680 |
680 |
680 |
680 |
680 |
680 |
680 |
680 |
680 |
680 |
e |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
f |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
電圧ゲイン(倍) |
9.38 |
9.10 |
8.67 |
7.91 |
6.28 |
5.69 |
4.92 |
3.87 |
2.36 |
1.33 |
0.71 |
0.15 |
0.00 |
〃(db) |
19.44 |
19.18 |
18.76 |
17.96 |
15.96 |
15.10 |
13.84 |
11.75 |
7.46 |
2.48 |
-2.97 |
-16.48 |
|
入力インピーダンス(Ω) |
80.9k |
66.7k |
52.5k |
38.3k |
24k |
21.3k |
18.5k |
15.7k |
12.8k |
11.4k |
10.7k |
10.1k |
10k |
出力インピーダンス(Ω) |
-0.18 |
-0.26 |
-0.38 |
-0.59 |
-0.99 |
-1.12 |
-1.29 |
-1.51 |
-1.80 |
-1.98 |
-2.08 |
-2.18 |
-2.20 |
これは、電池式GOAパワーアンプにΛ式MFBアダプタを装着して電流正帰還量調整抵抗(=b)を絞っていくイメージのシミュレーション。
正帰還量調整抵抗(=b)を絞るということは、正帰還を徐々に増やすことなのだが、そうした場合、
(イ) アンプの電圧ゲインは徐々に減少し、b=0の時に電圧ゲインも0になる。
(ロ) 入力インピーダンスは徐々に減少に、b=0の時に最低値となる。その時の入力インピーダンスはaとなる。
(ハ) 出力インピーダンスは負であり、その値は正帰還量を増やすとともに増加し、その最大値はb=0の時の−2.2オームである。
となることが分かる。
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
a |
10k |
10k |
10k |
10k |
20k |
10k |
10k |
10k |
10k |
20k |
10k |
b |
50k |
50k |
50k |
50k |
50k |
50k |
50k |
50k |
50k |
50k |
50k |
c |
6.8k |
10k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
6.8k |
d |
680 |
1k |
680 |
680 |
680 |
680 |
680 |
330 |
330 |
330 |
330 |
e |
8 |
8 |
8 |
8 |
8 |
16 |
4 |
8 |
8 |
8 |
1 |
f |
0.22 |
0.22 |
0.47 |
0.11 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.22 |
0.47 |
0.47 |
0.47 |
電圧ゲイン(倍) |
9.38 |
9.38 |
9.64 |
9.27 |
8.35 |
9.27 |
9.61 |
19.39 |
21.25 |
22.17 |
-80.93 |
〃(db) |
19.44 |
19.44 |
19.68 |
19.34 |
18.43 |
19.34 |
19.65 |
25.75 |
26.66 |
26.92 |
|
入力インピーダンス(Ω) |
80.9k |
80.9k |
138.3k |
68.8k |
90.9k |
68.8k |
127.2k |
128.6k |
-241.4k |
-231.4k |
1.5k |
出力インピーダンス(Ω) |
-0.18 |
-0.18 |
-0.39 |
-0.09 |
-0.47 |
-0.18 |
-0.18 |
-0.57 |
-1.22 |
-2.43 |
-1.22 |
次は、bを固定して、他の抵抗の変化がどういう結果をもたらすかの概観。
1が上の状態として、
2は、c、d即ち負帰還抵抗を変化させてみたものだが、その比率が同じであれば、b、cの変化は結果に何らの影響も与えないことが分かる。
3、4はf、即ち電流検出抵抗を変化させてみたものだが、まず、出力インピーダンスがfに大体比例することが分かる。よって、fに大きな抵抗値の抵抗を持ってくれば、簡単に大きな負性インピーダンスが得られる訳だ。また、入力インピーダンスもfが大きい方が大きくなることも分かる。また、影響は小さいが、fの大小が電圧ゲインにも影響し、fが大きいとゲインも大きくなることが分かる。
5はaを大きくしてみたものだが、結果負性出力インピーダンスが大きくなるから、大きな負性インピーダンスを得る方法としてaを大きくすることもかなり有効であることが分かる。併せて入力インピーダンスも大きくなっているが、電圧ゲインはやや小さくなってしまう。
6,7はe(=スピーカー)を変えて見たものだが、確かに出力インピーダンスはeの値によって変化しないが、入力インピーダンスがe(=スピーカーのインピーダンス)に反比例してかなり大きく変化することは気になる点だ。また、電圧ゲインはeが小さい方が大きくなっており、しかもその増加ペースがeの減少に比例ではなく、減少に加速して増加している。これはかなり恐ろしい結果を予測させる現象なのだが、とりあえず置いておいて次にいくと、
8、9はcとdの比率を変えて、電圧ゲインを上げてみようとしたものだ。計算結果も電圧ゲインは大きくなっている。そして、電圧ゲインを大きくすることも負性インピーダンスを大きくし、入力インピーダンスを大きくする方向に作用することがわかる。
が、9で、これまでの解析結果からさらにfも大きくして一層大きな負性インピーダンスを得ようとしたところ、なんと入力インピーダンスまで負性インピーダンスになってしまうではないか。
10は、さらにaも大きくしたもの。負性の出力インピーダンスは一層大きくなり、入力インピーダンスはやはり負性である。
入力インピーダンスが負性という状態は、現実にもあり得る状態ではないかと考えられるが、この状態で果たしてまともに動作するものかどうかは良く分からない。
で、11が電流正帰還アンプが破綻を秘めたアンプであることを示す状態だ。
7で、eを小さくするほどに電圧ゲイン(=出力電力)が加速して大きくなることを見たのだが、そうやって電圧ゲインを大きくなるようにeを小さくしてみると、電圧ゲインが−になってしまうのだ。
が、入出力間のロジックを考えると、この場合は入力Viが+の時は出力Voは+でなければならないから、この状態は論理矛盾に陥った状態だ。実際はどうなるのか?彼岸のOPアンプ動作に至ってしまうということだが、端的に言えば発振?だろうか。
やはり電流正帰還はむやみに試してみるものではない。下手をすれば発振に至るのだ。それはΛ式MFBアダプタを既存アンプに取り付けた場合も同じだ。アンプが発振してアンプを壊したり、スピーカーを飛ばしたりするリスクに耐えられる人以外は作ったり、使ったりしてはいけないのだ。
ま、逆に言えば以上のリスクを管理できる方が自己責任で作ったり使ったりする分には何ら問題がないわけだ。
が、その場合のこの回路構成による電流正帰還の問題点、というか、使いにくい点は、負性インピーダンスの大きさと、電圧ゲイン及び入力インピーダンスが反比例関係である点だろう。入力インピーダンスの低さはこの程度なら普通は問題ないのだが、残念なことに金田式パッシブチャンネルデバイダーの使用を考えると無理なのだ。どうしてもバッファアンプが必要になってしまう。実はこの点が、反転増幅型の電流正帰還アンプの製作を考えた理由であるわけで・・・。
ゲインの減少は、負性インピーダンスを欲張らなければ、取りあえずなんとかなるレベルだとは思うが・・・
負性インピーダンスの大きさと、アンプの電圧ゲイン&アンプの入力インピーダンスの高さを両立出来ないか、と考えたのが今回製作したアンプで、それが次の回路構成だ。
これは、上の反転増幅型に彼岸のオペアンプ動作を付加したものとでも言えるだろうか。
世の中では、発振器なんかでこういう帰還のつなぎ方をしているようだ。私もようやく認識したのだが、K式ターンテーブル制御アンプで使われているウィーンブリッジ発振回路がこの構成で、要するに発振器用の回路構成なのだ。果たしてこれを上手く活用して期待に応える電流正帰還アンプが構成できるのだろうか。
ここでもバーチャルショートで、Aから求めると、
Vp1=Vp2
Vp1=b/(a+b)*Vi+a/(a+b)*Vo
Vp2=d/(c+d)*Vo
よって、b/(a+b)*Vi=(d/(c+d)−a/(a+b))*Vo
∴Vo=(bc+bd)/(bd−ac)*Vi
∴A=(bc+bd)/(bd−ac)
となるのだが、ここでもこの型式の出力の取り出し口はcの両端であることに留意して
Vo’=(bc+bd)/(bd−ac)*Vi*c/(c+d)=bc/(bd−ac)*Vi
∴A=bc/(bd−ac)
う〜む。上に比して実に単純ではないか。分かりやすい。
この構成ではViとVoは反転動作だが、ViとVoが反転動作であるというロジックが成立するためにはAは−でなければならない筈である。a,b,c,dは現実界の抵抗だから、すべて正数である。だから、bc/(bd−ac)が負であるために、ac>bdであることが必須の条件になる。
もし、ac<bdという定数設定にしたらどうなるのか。それは多分彼岸のOPアンプ動作で、現実としては破綻=発振に至ることが予想される。恐ろしや〜で、この構成のアンプもアンプが発振してアンプを壊したり、スピーカーを飛ばしたりするリスクに耐えられる人以外は作ったり、使ったりしてはいけないのだ。
が、逆に言えばac>dbを満たすように定数設定すれば良いのだ。実に簡単なリスク管理であり、5の非反転増幅方式ではこの点の式がちょっと複雑で、どこが限界なのかが簡単には計算できないのに対してこちらは限界計算、結局、限界管理がしやすいのは大きなメリットだ。と言えるだろう。
次に入力インピーダンスZiだが、
Ii=(Vi−Vp1)/a に Vp1=b/(a+b)*Vi+a/(a+b)*Vo=(b*Vi+a*Vo)/(a+b)を代入し
Ii=(Vi−Vo)/(a−b)
ここで Vo=(bc+bd)/(bd−ac)*Viを代入すると
Ii=c/(ac−bd)*Vi だから
Zi=(ac−bd)/c
となる。
ここでもac<bdという設定にしたらZi即ち入力インピーダンスが−、即ち負性インピーダンスになるということ。だが、ac<bdはこの構成のアンプでは破綻条件だから、ここで単独に入力インピーダンスが負性といったところで何の意味もない。動作の破綻と共に入力インピーダンスが計算上負性になるということだ。
次は出力インピーダンスZo
ちょっと見ると、Zo=0ではないのだろうか、と思える。バーチャルショートで考えるということは、このOPアンプが理想OPアンプということだ。だからZo=0Ω。それがFBをちょっといじったぐらいで変わるのだろうか?
実は、もとより出力をVoとアース間で取り出せばそうなのだが、出力をcの両端で取り出すというのがこれに限らず電流出力タイプのアンプを考える上でのミソだ。
で、これもON−OFF法で計算して、
2c時のVo’=2bc/(bd−2ac)
c時のVo’=bc/(bd−ac)
従って
Zo=2c(2bc/(bd−2ac)−bc/(bd−ac))/(2bc/(bd−ac)−2bc/(bd−2ac))
整理して、な〜んと!
Zo=−bd/a
となるのである。
ここでも出力インピーダンスは帰還抵抗a,b,dのみで決まって、c(=スピーカーのインピーダンス)が影響しない。
しかも、a,b,dは現実界の抵抗で即ち正数だから、出力インピーダンスは、はなから負性インピーダンスになることに決まっているのだ。
ところで、−b/aはどこかにあった。上に方で見た2 反転増幅(電圧負帰還)の場合の増幅率Aそのものだ。出力インピーダンスが、そもそもの反転増幅の形の場合の増幅率に電流検出抵抗dを乗じた数値に決まるとは実に面白い。
a |
51k |
51k |
51k |
51k |
51k |
51k |
51k |
51k |
51k |
51k |
51k |
51k |
b |
560k |
560k |
560k |
560K |
560k |
560k |
560k |
560k |
560k |
820k |
820k |
820k |
c |
4 |
4 |
4 |
8 |
8 |
8 |
16 |
16 |
16 |
8 |
8 |
8 |
d |
0.11 |
0.22 |
0.47 |
0.11 |
0.22 |
0.47 |
0.11 |
0.22 |
0.47 |
0.11 |
0.22 |
0.47 |
電圧ゲイン(倍) |
-15.73 |
-27.72 |
37.84 |
-12.93 |
-15.73 |
-30.94 |
-11.88 |
-12.93 |
-16.21 |
-20.64 |
-28.82 |
-290.27 |
〃(db) |
-23.93 |
-28.86 |
|
-22.23 |
-23.93 |
-29.81 |
-21.5 |
-22.23 |
-24.2 |
-26.29 |
-29.19 |
-49.26 |
入力インピーダンス(Ω) |
35.6k |
20.2k |
-14.8k |
43.3k |
35.6k |
18.1k |
47.2k |
43.3k |
34.6k |
39.7k |
28.5k |
2.8k |
出力インピーダンス(Ω) |
-1.21 |
-2.42 |
-5.16 |
-1.21 |
-2.42 |
-5.16 |
-1.21 |
-2.42 |
-5.16 |
-1.77 |
-3.54 |
-7.56 |
これが、今回製作した電流正帰還・電池式完全対称型DCアンプをイメージしたシミュレーションだ。
これを眺めると、反転型の電流正帰還アンプが非反転型のそれに比べると分かりやすさと融通性でかなり優れるように思うのだが、結論として、6〜8Ωのスピーカーを対象とした場合、a=51k、B=560K、d=0.22Ωというのが1つの良い解であるように思えるがどうだろう。
こちらの方式は、上の方式に対して、電流正帰還量を増やすほどに電圧ゲインが減ってしまうということがないので、大きな負性インピーダンスを得ることはより易しい。Zo=−bd/aだから、b、dを大きくするか、aを小さくすれば良いのだ。
が、負帰還量を考えれば、a,bではなく、dで調整すべきだ。というと調整範囲が狭いように感じてしまうが、実際は上の表のようにdで出力の負性インピーダンスは大きく調整できるのだ。
が、あまり大きくするのは妥当でない。上の表の左から3番目のように、出力インピーダンスとc(=スピーカーのインピーダンス)の合計値が負になるような状態では、ViとVoのロジックがすでに不整合であるから、これはもう破綻した動作だ。
スピーカーのインピーダンスが周波数によって公称の半分程度に下がる部分があることを考慮すれば、負性出力インピーダンスの絶対値は、使用するスピーカーの公称インピーダンス値の1/3〜1/4程度に押さえるのが妥当のように思う。
ところで、上で述べたとおり、この方式については入力インピーダンスも高い値が得られることを期待したのだ。
が、残念ながら入力インピーダンスが下がってしまうのはこの方式も同じだった。
とはいえ、得られる電圧ゲインと負性インピーダンスの大きさを考えると、こちらの反転増幅方式の方が比較すれば高い入力インピーダンスが得られるので、とりあえず良しとすべきだろう。実際36KΩの入力インピーダンスが得られれば、低音側フィルターでそのfcが移動しても何とか使えないこともないのだ。私の駄耳では(^^;
最後に、電流負帰還についても考察してみよう。
それが、右だ。
え、最初の非反転増幅と全く同じではないか?
実はそうなのだが、まあ、解析してみれば、
この動作でのアンプの増幅率Aも、
バーチャルショートだから Vp1=Vp2
ここで Vp1=Vi、Vp2=a/(a+b)*Vo
よって Vi=a/(a+b)*Vo
よって
Vo=(a+b)/a*Vi
と、ここまでは最初の非反転増幅と同じだが、ここで、電流負帰還アンプとして使用する場合は、その出力はbの両端から取り出すことに留意しなければならない。
だから、電流負帰還の場合の正しい出力Vo’は
Vo’=Vo×b/(a+b)=(a+b)/a*Vi*b/(a+b)
よって
Vo’=b/a*Vi
∴A=b/a
となる。
入力インピーダンスZiは、OPアンプの定義からして、
Zi=∞
であることは明らかだ。
では、出力インピーダンスはどうか。
ON−OFF法で求めよう。この場合はbが即ち負荷(スピーカー)だから、
Zo=2*R1*(Vo2−Vo1)/(2*Vo1−Vo2)に
2b時のVo’=2b/a*Vi
b時のVo’=b/a*Vi
を代入して、
Zo=2b(2b/a*Vi−b/a*Vi)/(2b/a*Vi−2b/a*Vi)
なんと、分母が0となってしまうので、コンピューターではDIV/0! エラー になるのだが、実はエラーではなくて、その意味は、
Zo=∞
なのである。
要するに、バーチャルショートが完璧に成り立つOPアンプとは、即ちオープンゲイン∞、入力インピーダンス∞、出力インピーダンス0Ωの理想状態であるから、この非反転動作負帰還アンプは、Voとアースの出力インピーダンスが0Ωであるが故に、これをb両端から出力を取り出す電流負帰還アンプとして使用した場合は、出力インピーダンスが∞になる、という表裏一体の関係なのだ、ということだろう。
が、この世界は理想的ではないので理想OPアンプも現実には存在しない。現実に存在するOPアンプのオープンゲインは有限だ。その場合の出力インピーダンスはどうなるのだろう。
という点は“What’s UTiCd?”氏のHPに解があって、OPアンプのオープンゲインをA’として、Zo=a*(A’+1)となるそうだ。
例えば、a=0.22Ωとして、A’=60bd(1000倍)であれば、220Ωの出力インピーダンスとなるわけだ。
が、この型式で安定に動作するアンプを作ることは現実的ではないだろう。この型式ではスピーカーを取り付けないとアンプには負帰還がかからない。だから現実的にスピーカーと一体型のアンプしか作れないだろうから、汎用性のあるアンプにはならない。
また、極めて高い出力インピーダンスがスピーカードライブにとって有益なのかどうか。これは高出力インピーダンスの電流出力アンプを製作される方もいらっしゃるのでなんとも言えないが、通常は電圧負帰還と電流負帰還を併用して、適度な正の出力インピーダンスに設定するために活用するということではないだろうか。そして、それを最も単純な形で実現している例が実は金田式MFBだ、ということになるのだ。(ところで、K式MFB方式の出力インピーダンスも多分計算が可能だと思うのだが、ここではやらない。)
(2002.5.13)
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